第59話  第38回全日本大会開幕

 

昨年の、不動暁と相馬清彦との激闘から早くも1年が経過した。
11月、今年も全日本大会開催の日がやってきた。
会場は例年通り、千葉房総の総本山武道場。
静かな聖地は、年に一度の熱気に包まれる。

 

今回、相馬は太郎、ロベルトの3人で試合前日に会場入りをした。
美雪やあずさ、岩村とは行動を共にしないことにした。
いつもの大会時とは違い、笑い声はない。
それほど相馬軍団は今大会に掛ける思いが強く、そして完成度の高い仕上がりであった。

 

武道場に着くや、サブアリーナで身体をほぐす相馬ら3人。
太郎は身体がうずいているのを感じていた。

「(早く、試合がしたい。3カ月の死ぬかと思った程の稽古の成果を試してみたい)」

それは、ロベルトも同じだった。
迫力満点のシャドーは自信に充ち溢れていた。

「てめーら! 初めての全日本だからって、ビビんなよ! お前らはそこそこに全日本で通用する選手になってるハズだ。太郎は2回戦の山岸。ロべは4回戦でイワン。少なくともそこまでは勝ちあがって、相馬軍団の強さを見せつけるんだ!」

「押忍!」

「オース!」

「ふふ、入門1年と半年か……どこまで強くなってるかな」

 

 

午前10時、開会式が始まる。
全国から集まった精鋭128人が武道場中央の壇上に並ぶ。
神覇館の日本トップ128人による、スーパートーナメントが幕を切って下ろす。

 

二階観戦席では、美雪、あずさ、岩村が見守る。

「あずさ、太郎君が立ってるよ。凄いねー、あの体格で全日本に出ちゃうんだから。太郎君、60kgちょいくらいでしょ? 大会の最軽量選手じゃない?」

「……そ、そうだね」

「ちょっとお、あずさ。何、意識してんのよ。もう、みんなにばれてんだから堂々と応援すりゃいいじゃん。……あ、でも約1名(相馬)知らない人がいるけどねえ」

「ははは……」

苦笑いの岩村。

 

選手宣誓は、ゼッケン128番、前大会準優勝の相馬。
優勝を義務付けられている選手代表だ。

 

『宣誓! 我々、選手一同は、武道空手道精神に則り、正々堂々と戦うことを誓います!』

 

開会式が終わると、早速1回戦が始まる。
ゼッケン1番は、前大会第3位の五十嵐だ。
いつものように怒涛の攻撃でなんなく2回戦に進出する。

 

太郎はゼッケン69番。
試合は午後になる。
1回戦の相手は今年夏の体重別全日本中量級ベスト8の比嘉。
沖縄の選手で、沖縄県大会で優勝している実力者だ。

 

ロベルトはゼッケン108番。
3人とも試合まで時間があるので、サブアリーナで戦略を練っている。

「太郎、相手は沖縄チャンピオンだ。いけるか?」

「押ー忍、いけるかどうかはわかりませんが、とにかく鍛え上げたスタミナで勝負しようと思います」

「そうだな、中量級とはいえ、比嘉はおまえよりも15kg以上でかいからな。スタミナでの勝負がいいかもな」

 

 

午後になり、太郎の試合が迫る。

相馬軍団が、武道場に向かう。
と、廊下の向こう側から歩いてくるのは、第36回全日本王者の志賀だ。
相馬の前で十字を切って挨拶をする。

「押忍、相馬先輩」

「よお、志賀! 調子はどうだよ!」

「……まあまあですね」

「ふん。今回は三回戦で俺の愛弟子の太郎と当たるからよー」

「ちょっ、まだ一試合も終わってないのに」

あわてる太郎。

「志賀よお、俺とやりたきゃ、まず太郎を倒すんだな」

「愛弟子……相馬先輩は何か教えることが出来るんですか?」

「・・・・・・あ? よく聞こえなかったなあ。もう一度言ってみろよ」

相馬と志賀の間に、緊迫感が巻き起こる。

「聞こえていない方がいいですよ」

「貴様! ぶっ殺す!」

「まあまあ、先輩」

「では、失礼します。押忍」

志賀は一礼をして去って行った。

「あの糞野郎!」

すると、相馬の背後に大きな影。

「ずいぶんと目の敵にされとるやんけ」

「あ?」

相馬が振り向くと、相馬の天敵。
大阪支部の下村が立っていた。
いつものように隣には宮地もいる。

「お前は本当にみんなに嫌われとるな」

「今度は貴様か! 今日もうっとうしい髭だな。試合中に俺様の蹴りで剃ってやるよ」

「はは、お前とぶつかるのは決勝や。そこまで昇ってこれるんか?」

「バーカ! 俺様は前大会準優勝。てめーは7位だったか? 頭が高いんだよ!」

「なんやとっ!」

殴りかかろうとする下村を宮地が止める。

「まあまあ、先輩。試合で白黒付ければいいやないですか。今回も勝って、完全勝利と行きましょうや」

「そ、そやな。全く、うっとうしい奴や。これへんと思うが、決勝でまっとるで」

「糞髭がっ! てめーこそ、途中で消えるなよ!」

後ろで聞いていた太郎には、二人のやりとりが何だかエール交換に聞こえてきた。
しかし、志賀といい、下村といい、相馬には敵が多いなと呆れる太郎だった。

 

第38回全日本大会トーナメント表

 


NEXT → 第60話  全日本大会初試合 へ


BACK ← 第58話  地獄のサーキット へ


 

サブコンテンツ

このページの先頭へ