第52話  全日本大会への切符

 

太郎の試合が近づいて来た。
反対側で待つ宮路は太郎の方を睨んでいる。
太郎はそれを見て闘争心を上げていく。

ロベルトに眼鏡を渡すと、軽く飛び跳ね試合に備える。

 

『ゼッケン10番、水河太郎、東京! ゼッケン16番、宮路哲也、大阪! 』

 

「太郎、ぶっ殺して来い! !」

相馬は両手で太郎の肩を強く叩く。

「おーし!」

 

太郎は壇上に駆け上がる。

二人並ぶと、身長差は15cmと大きく違う。

「始めい! !」

 

開始の太鼓が鳴ると、宮路は気合十分で襲い掛かってきた。

「おるあー!」

高い位置からの突きの打ち下ろしの連打。
太郎は懐に入ろうとするが長いリーチの突きや膝でなかなか上手くいかない。

「おうらー、どないしたー! 突きが届かんかー!」

「くそっ、やっぱ突きが打てない」

ロベルトは不安そうに見つめる。

「ああ、どうすればいいの?」

「相手のリーチが長すぎるなあ。下突きは至近距離じゃねーと打てないからなー」

宮路は攻撃の手を緩めない。

「ははっ! 相馬の弟子はこんなもんかー!」

太郎は大きく息を吐いた。

「(宮路、俺は、お前に勝てれば……ベスト8に入って全日本につなげられればいいんだ。俺の捨て身の攻撃を受けてみろ! )」

太郎は宮路の前足に下段を打つ。

「なんやそのしょーもない下段は」

宮路は下段に合わせて膝を上げ、カットする。
しかし太郎はそれでも構わず下段を打ち続ける。
下段はカットされると脛が膝に当たりダメージが大きい。
トーナメントではこのようなダメージをなるべく負わないようにしなければならない。

「ちっ、しつこい奴やなー」

宮路は突きで話そうとするが太郎はすでに懐に入っており、効果的ではない。

太郎は脛へのダメージはお構いなしで宮路に下段を打ち続ける。

「(こ、こいつ。トーナメント関係ないんか。こないに打ち続けたら、明日使いモンにならんで)」

 

相馬は、ふふんと鼻で笑った。

「太郎の野郎……捨て身の作戦に出たな」

「オー、太郎。足大丈夫?」

「大丈夫な訳ねーだろ! しばらく歩けねーよ」

太郎は気合十分で宮路の足に蹴りを打ち続ける。

「おぉーあー! !」

「あかん! 足が動かん、まじか?」

相馬の声援にも気合いが入る。

「太郎ー! 奴の足が止まったぞー! 後、30秒だ! その足じゃ延長戦は無理だぜー!」

 

試合終了の太鼓が鳴った。 

「相馬先輩……太郎は勝ったかな?」

「ううむ、前半は宮路が攻めてたからなー……分からん」

 

そして判定が始まる。
白が太郎。
赤が宮路。

「判定をお願いします……判定っ! !」

4人の副審が旗を挙げる。白が2本、赤が2本。

「うおっ、主審の判断で決まるぞ!」

「オーゴッド! 太郎」

 

しばしの間が空き、主審が動いた。

「白、1、2、赤、1、2……主審、白っ! !」

3-2の僅差判定で太郎が勝利を収めた。

「はあ、はあ、なんやと……俺が、こんな奴に……」

「はああ、勝った!」

 

宮路は無言で太郎と握手をし、壇上を下りた。

「太郎ー、やったネ。全日本大会だヨー!」

「はあ、ぜ、全日本……はへー」

「おう、太郎。よくぞ下村の部下を倒してくれたな。ロベ、太郎をおぶったれ」

太郎は足がガクガクで動かなくなっていた。

 

 

宮路は、ゆっくりと壇上を下り、下村に深々と頭を下げた。

「下村先輩、すんません。勝てませんでした」

「おう、随分蹴りまわされたな」

「……押忍」

「気持ちやな。お前は気持ちで負けたんや。あいつ見てみい。おぶられて帰ってくやんけ」

「押忍」

「まあカタキは俺がうつで。全日本で相馬の野郎をぶちのめしてなあ」

「押忍、お願いします」

 

 

体重別全日本は初日を終え、各階級64人づつ計256人いた選手達は、8人づつ計32人にまで絞られた。
軽量級は前年王者の辻、準優勝の津川、東京都大会で準優勝した総本山の百瀬、同じく東京都大会で五十嵐と熱戦を演じた青山、そして太郎などがベスト8入りした。
中量級は中条、軽重量級は五十嵐、ロベルト、志賀、重量級は伴兄弟などが勝ち進んだ。

太郎らは板橋道場の応援団と合流した。

 

「すごーい、太郎さん! ロベルトさん! 二人とも緑帯で全日本出場を決めちゃうなんて!」

あずさは興奮気味だ。

「おいおい、あずさ。凄いのはこいつらの師匠のこの俺様だろ」

相馬は不服そうにあずさに詰め寄る。

「キヨ、あんたの傍若無人に耐えながら修行に励んだこの子達の方が偉いんじゃない?」

「う、美雪。うるせー」

皆は笑いながら、ホテルに向かった。

 

【第23回体重別全日本大会途中経過】

 


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