第49話  第23回体重別全日本大会開幕

 

「来たな……ついに選手として」

6月。
夏の日差しがまぶしい。

 

太郎らは第23回体重別全日本大会に参加するため大阪に。
今回、選手は太郎、ロベルトの二人。
応援に相馬、あずさ、美雪、岩村ら板橋道場の面々。
昨年と同じホテルを取り、明日に備える。

「ああー、応援なんて退屈だなー。俺も選手として出れば良かったなー」

相馬が部屋で寝転がりながらぼやいている。

「相馬先輩、さすがに全日本準優勝者が体重別には出ないですよ。若手の登竜門的な位置づけでもあるんですから」

岩村は、荷物を整理しながら相馬と話している。

「岩村さん、いつもすんませんねー。テレビのお仕事大変なんでしょ?」

「ええ、まあ大変ですけど、空手も好きなので、出来るだけお手伝いできれば」

この会話を聞いて太郎は、驚いた。

「えっ、岩村先輩はテレビのお仕事されてるんですか?」

「うん、まあね」

「へー」

「へーじゃねーよ! 岩村さんはな、キー局のプロデューサーやってんだぞ! お前みたいなニート大学生とは違うんだ」

「はえー、岩村さん。凄いんですね」

「いやー、そんなに凄くはないよ」

「僕、業界人はもっと、ガツガツしてるイメージだったので」

「うん、そういう人もいるけどねー」

空手と関係ない話で盛り上がれるほど、太郎はさして緊張していなかった。
それは、体重別全日本大会という大舞台で自分なんかが活躍できるとは思っていないからだった。
失うもののない太郎は、とにかく全力でぶつかっていくことだけを考えていた。

しかし、相馬は太郎にプレッシャーを掛ける。

「太郎、おめー緊張感がねーなー。てめーらは体重別でベスト8に入って、11月の全日本に出るんだぞ! 負けたらどーなるかわかってんだろーなー!」

「お、押忍。でも相馬先輩。僕みたいなのが64人のトーナメントでベスト8に入るなんて、ちょっと想像つきません」

「てめー、なんちゅう情けない奴だ! ロベッ、何か言ってやれ!」

ロベルトを見ると、ソファーに座ったまま寝ていた。

「ロベー! てめーという奴は! いつも寝てやがんなー」

 

またいつものような大騒ぎ。
隣のあずさと美雪の部屋にまで聞こえているようだ。

「お隣は騒がしいわね。またキヨが暴れてんだろーけど」

「うん。でも太郎さんやロベルトさんがリラックス出来るからいいんじゃないの?」

「……で、この前どうだったの?」

「え?」

「とぼけないでよー。太郎君と! 私がセッティングしてあげたのに、あずさ何にも報告しないんだから」

「あ、ごめん、ごめん。へへへ」

「また誤魔化して。でもさあ、あずさから男の子にアプローチするなんて、初めてだよね」

「そだね」

「まあ、あずさに近づこうとした男子は、みんなキヨに追い返されていたし。全く、いい加減、妹離れしろってのよね」

「……心配性なんだよね」

「でも……まさか一番弟子が、妹と接近してるとは。しかも太郎君……盲点だよね」

「うふふ」

 

 

隣の部屋で、あずさ達が自分の話をしているとは露にも知らない太郎だった。

太郎は、岩村の持ってきたトーナメント表を見せてもらった。

「太郎君が、有名どころの選手と当たりそうなのは……三回戦で、宮路選手だね」

「何ー! あの下村に付いていやがる糞ジャリと当たるのか! 三回戦っつったらベスト8が掛かった試合じゃねーか! 太郎、負けんなよ!」

「ひえー! いや、その前にそのまでいけるかどうか……」

「また貴様、そんなことをっ! お前の試合は俺様と下村の代理戦争なんだよー! !」

「ひえー!」

また始まったと笑っている岩村は、パンフレットを眺めて、ある名前に気づいた。

「あ! 相馬先輩。今回の体重別に志賀選手が出るみたいですよ」

「へ? 志賀の野郎が? どれどれ……お! 本当だ。あいつ去年の全日本で俺に負けたのが応えたと見えるな。全日本王者が体重別に参戦とは。ロベルトと同じ軽重量級か。えーっと、ロベルトと当たるのは準々決勝だな。こりゃあ見ものだぜ」

相馬の予想通り、志賀は昨年の全日本敗退を受け、体重別への参戦を決めた。
元全日本王者に退路はない。
体重別優勝のみが自らに課す目標だった。
それぞれが思いを秘め、熱い夏の決戦が始まる。

 

【第23回体重別全日本大会トーナメント表】

 


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