第43話  体重別全日本大会への切符

 

太郎は息も絶え絶え、ふらつきながら壇上から下りてきた。
ロベルトに肩を借り、会場端に腰を下した。
あずさを始め、美雪、岩村も興奮している。
あの太郎が入門1年未満で黒帯選手に勝利したのだから。

「ぜーぜーぜー、皆さん、応援ありがとうございましたーああ」

「おう、太郎! 任務終了だな。100人近く出場している大会で、ロベルトとともにベスト16まできやがった。俺の教えは間違ってなかったようだ」

「キヨも太郎くんも何言ってるの? まだ試合は終わってないでしょ?」

美雪が怪訝そうな表情を浮かべる。

「おいおい、次は五十嵐先輩だぜ? しかもこの太郎の有様……白帯にだって勝てねーよ」

「そんなのやってみないとわかんないじゃん」

あずさはほっぺを膨らませている。

「オー、五十嵐選手の試合やってるよ」

ロベルトが試合場を指差す。
Dブロック三回戦最終試合。
五十嵐が戦っている。

「五十嵐選手の相手、まだ、ヤングだね」

「アイツは杉並道場の青山だな。今年の体重別軽量級で準優勝した津川と良い勝負してたな。これから伸びるだろうな。まだ19歳だし」

「ぜーぜー、19歳で津川選手と良い勝負……はあはあ」

 

その青山は、身体が一回り大きい五十嵐と正面から打ち合っている。
大きな気合を入れながら五十嵐に果敢に挑んでいる。

「おらー!」

五十嵐も殴り合いに応じる。

「なかなかいい突きだな。だが、まだ先があるからな、ここらで決めさせてもらうぞ!」

五十嵐は左の前蹴りを青山のみぞおちに入れ、距離をとろうとした。
が、青山の勢いは止まらず、前に出てくる。

「ちっ!」

五十嵐は、それでも無理な体勢から上段回し蹴りを青山のアゴにヒットさせた。
五十嵐は意識のない青山もろとも後ろに倒れこんだ。

「痛ててて。こいつ、蹴られてなお前に突っ込んできやがった」

『赤、上段回し蹴り、一本! !』

五十嵐の一本勝ち。
太郎の四回戦の相手は予想通りに五十嵐となった。

「あんな距離の詰まった上体から上段回し蹴りを打つなんて。俺は一体どうやって戦えばいいんだ?」

 

 

96人いた選手も16人に絞られた。
四つあった試合場も四回戦からは一箇所で行われる。
ベスト8に入れば、来年度の体重別全日本への出場が決まる。
切符争奪戦もいよいよ最終局面を迎えていた。

 

30分ほどの休憩時間が取られ、四回戦が始まった。
太郎、ロベルトの試合まではまだ時間がある。
太郎は息は整いそうだが、身体が上手く動きそうにない。

「ロベ、次の試合。中条選手とだな。頑張れよ。ロベはまだ戦えるだろ?」

「オー、頑張るヨ。でも太郎もベストを尽くしてね」

「おう! 伝説の選手と戦えるんだ。胸を借りるつもりで頑張るぜ」

 

そしてロベルトの試合が始まる。

『ゼッケン73番、中条選手。ゼッケン80番、ロベルト選手』

「ロベっ、あんな野郎には負けんなよ! !」

「ロベー、行けー」

ロベルトは中条よりも身長5cmで、体重は10kg程上回っている。
無差別の今大会では体格を活かして勝ち進んできた。
今回もそのつもりでいる。

「始めい! !」

試合が始まった。
ロベルトはこれまでの試合同様、重戦車のように相手に攻撃を浴びせる。
だが、中条は冷静に攻撃を捌き、返しの技を打っていく。
ロベルトはまるで有効打がない。

「ロベー、構うな! 突っ込めー!」

相馬の声が響く。

 

中盤、いよいよ中条のペースになってきた。
ロベルトの攻撃パターンを読み終えたらしく、カウンターを決めていく。

「わわ、ロベルトの攻撃が全てカウンターで返されていく」

 

ロベルトは本戦3分間、勢いこそなくならなかったが、中条には完璧に攻撃を封じられてしまった。
試合終了。
中条の5-0での優勢勝ち。
ロベルトにとって初めての敗北となった。
中条はロベルトと握手をし、クールなまま壇上を下りていった。

「はあはあ、相馬先輩、僕、負けちゃったヨ」

「おう、中条か……思ったよりやるじゃねーか。ロベ! 気にすんな。体重別全日本への切符を取れる大会は、まだ他にもあるからよ!」

「押忍……」

いつも陽気なロベルトだが、さすがにへこんでいるようだ。

「よーし、次は太郎だ! 見事散ってこいや!」

「押ー忍、やってきます!」

 

『それでは四回戦最後の試合を始めます。ゼッケン88番、水河選手。ゼッケン96番、五十嵐選手』

太郎は、ほほを手で叩き、気合を入れて壇上に上がった。

「身体はまともに動かなそうだ。だが、刺し違える覚悟でぶつかってやる」

 

不動とともに神覇館の一時代を築いてきた五十嵐。
そんなレジェンドと初心者に毛が生えた自分が戦える。
太郎は違う意味での緊張がみなぎってきた。

「やるぞ、やってやる!」

しかし、名前を呼ばれても五十嵐は壇上に上がってこない。そもそも壇上の前にもいない。

「ん?何だ?」

 

『五十嵐選手は前試合で、腰を強く打ち、ドクターストップとなりました。よって、勝者はゼッケン88番の水河選手となります』

 

「えーーー!」

太郎のベスト8進出が決まった。

なんと太郎は、四回戦を戦わずして、体重別全日本の切符を手に入れてしまったのだった。

 

【東京都大会途中経過】

 


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