第187話  太郎vsロベルト再び

 

ついに太郎とロベルトとの対決が始まった。

二人が試合で戦うのは二度目。
最初の試合は、道場の昇給審査の時。

その時太郎は、ロベルトに圧倒的な力の差を見せつけられ、さらには上段膝蹴りでノックアウトさせられた。

その後、太郎の一番近くにいたロベルトは、すぐに全日本のベスト8に入り、世界大会に出場し、体重別を制し、そして全日本を制した。

太郎が空手から離れている間に、ロベルトはアメリカに渡り、各世界の地方大会で活躍し、限界組手で100人抜きを達成した。

そのロベルトと、今、世界大会の準決勝で激突する。

 

試合が始まった。

両者は、構えたまま相手の様子をうかがっている。
お互いに実力を認めあっているのだ。

そう簡単には攻め入れない。

先に動いたのは太郎だった。
瞬時にロベルトの懐に入り込み、下突きの連打を仕掛ける。

しかし、ロベルトの強烈な膝蹴りが太郎の胸元に突き刺さり、距離を開けられた。

そこに伸びのある前蹴りが炸裂し、太郎は一瞬息が詰まった。

次の瞬間には、ロベルトのブラジリアンハイキックが太郎に襲いかかっていた。
太郎は、顔を後ろに反らし、間一髪避けることが出来た。

太郎は、すばやく後ろに飛び、態勢を立て直した。
この両者の攻防に会場はヒートアップする。

 

「ロベの野郎。いきなり決めにかかってやがるな」

相馬はロベルトの流れるようなコンビネーションに驚いていた。

「あのすさまじい攻撃を受けても後ろに下がり、落ち着いて態勢を立て直す。水河君も凄い。間違いなく世界トップレベルの攻防ですね」

志賀も両者の試合に見入っている。

「タロちゃん……」

あずさから小さな声が漏れる。

あずさにとってはロベルトも長いこと板橋道場にいた友人だ。
大きな声では太郎を応援出来ない。

そんなあずさの気持ちを察してか、美雪があずさの肩を手で支える。

「大丈夫、二人とも無事に帰ってくるって」

「……うん」

 

 

太郎は大きく一歩前に出て、後ろ回し蹴りを放つ。
ロベルトは、片手を受けるが、太郎はすぐに飛び後ろ蹴りを打つ。

蹴り足はロベルトの頬をかすめた。

しかし、ロベルトは着地する前の太郎の脇腹に下突きをめり込ませる。
そしてすぐに同じ場所に膝蹴りを打ち込む。

一か所を攻め続けるのは、ロベルトの必勝パターンだ。

再度膝蹴りが飛んでくると、今度は太郎の肘がロベルトの膝にめり込む。

ロベルトは顔を歪め、一歩後ろに下がる。

「(どうだ、ロべ。散々、森にバットで殴られ鍛えた肘の味は?)」

 

あっという間に本戦の3分間が過ぎた。

判定は0-0の引き分け。

激しい攻防を繰り広げた二人だったが、全く息切れしていない。

 

 

「太郎も、ロべもまだ余裕がありやがるな」

相馬は愛弟子二人の試合に満足気だ。

「しかし、ロベルト君は限界組手で100人と戦い抜いた男。そんな選手と互角に戦っている太郎君は、一体どんな修業をしてきたんだ。しばらく試合から遠ざかっていたのに」

志賀は驚きを隠せない。

「太郎は、隠岐師範にしごかれてたんだ。半端な稽古じゃなかったはずだ」

「え? あの隠岐師範の。誰も耐えきれなかったっていう……」

「あいつは本気なのさ。何か背負っているものがあるんだ。命を賭けてもいいって思える程の……な」

志賀はチラとあずさを見る。

あずさは口をきゅっと締め、太郎を見つめていた。

 

 

延長戦が始まった。

太郎は突きでロベルトを攻めたてた。
ロベルトも突きを打ちかえす。どつき合いになった。

「(ロベ、覚えているか。俺達が初めて会った日のことを。同じ日に板橋道場に来たんだよな。あの時、お前がいなければ、俺は道場に入門出来なかったかもな。最高に弱虫で情けない男だった俺が、今、世界屈指のお前と互角にやりあってるんだぜ)」

「おおおおおー」

ロベルトは大きな気合を入れながら重い突きの連打を太郎に打ち込む。
が、太郎は一歩も引かない。

「(あずさ先輩へのアプローチでも、いろいろ迷惑かけたっけな。あの頃は楽しかったな。大会が終わったら、これまであったこと、いろいろ語り合おうぜ! )」

太郎は大きく踏み込み、渾身の百裂拳を打ちつける。

 

第10回世界大会途中経過

 


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