第185話  太郎vs志賀

 

初心者大会で出会って以来、常に太郎にとって目標の一人であり、ライバルであった志賀。

5年前の全日本では圧倒的な力の差を見せつけられた。

偶然出会った遊園地。
クールな日本のエースも相馬と同じ妹思いな男だということも分かった。

そして、偶然出会った飲み屋での出来事。

 

『ゼッケン32番、志賀創二、日本!  ゼッケン56番、水河太郎、日本! Number 32 Souji Shiga in Japan! Number 56 Taro Mizukawa in Japan!

 

長きにわたって続いたライバル同士。
その決着をつける時がやってきた。

二人は壇上を相対する。

 

『構えてー……始めい!』

 

開始と同時に両者激突する。

小細工はいらない。
どつき合うのみ。

二人とも同じ思いだった。

受けは無い。
ひたすら、突き、蹴る。

まるでケンカのようだ。

 

―――太郎さん、この人は昨年の全日本王者の志賀君だよ
―――どうも、太郎さん。今日は頑張って下さいね
―――押忍……

 

太郎の百裂拳が炸裂する。
志賀は構わず大きなモーションから強烈な下段を太郎のふとももに叩きこむ。

 

―――ど、どうする? 志賀選手……強い。半端なく。喰らった膝蹴り、前蹴りの威力は勿論だが、何と言ってもあのディフェンス技術の高さ。なんの攻撃も当たる気がしない。しかも、腹にダメージを受けたせいで体力ももう限界だ。ああ、強いな

 

志賀の膝が太郎のみぞおちに突きささる。
太郎の中段蹴りが志賀のあばらに響く。

 

―――笑ってくれ。妹可愛さに尾行する馬鹿な兄を……
―――いや、志賀さん。実は僕も一緒なんです。もう片方のメガネでショートカットの女の子が、僕の妹分なんです。僕も彼女を尾行しているのです

 

二人は、大きな気合を入れながら殴り合う。

 

―――僕は……あずささんのことが、好きだった。そして、その気持ちは今も変わらない。あずささんは、今まで異性に興味が無かったようだが、時間を掛ければ僕の気持ちは伝わると思っていた。だが、今、あずささんは……

 

「タロちゃん……」

あずさは、二人の戦いに見入る。

 

―――分からなかった。何故、君なのか? そして、今、君と話して……申し訳ないが、あずささんと釣り合うような男とは思えない

 

「太郎先輩い……ついにここまで来ましたねえ!」

正宗のマイクを握る手が震える。

 

―――あずさ先輩、ボクは志賀さんを倒します。見てて下さい

 

 

本戦の終了太鼓が鳴った。
会場からは大きな拍手が沸き起こった。

 

『判定をお願いします……判定!』

 

皆、赤い旗を上げている。

「赤……1、2、3、4、5……赤っ!」

 

太郎の圧勝だった。

パワー、スピード共に志賀は太郎に大きく及ばなかった。
しかし、その表情は負けた者の顔ではなかった。

志賀は、太郎のもとに駆け寄る。

「太郎君……強かったよ。完敗だ。最後の日本人選手として、頑張ってくれ!」

志賀はさわやかな笑顔で太郎の手を強く握った。

「お、押忍!  ありがとうございます」

太郎は泣きそうになってしまった。
長いライバル対決に一つの終止符を打った。

 

志賀は、拍手に包まれながら壇上を降りる。

21歳で初出場で全日本を制覇してから7年間。
相馬軍団との戦いを繰り広げながら、常に全日本を引っ張り続けて来た。

悔いの無い試合内容だった。
恨みも妬みも無い。

自分の全てを出し切った。

 

「創二……お疲れさん」

先輩の辻が志賀にタオルを渡す。

「先輩……ありがとうございます」

「水河はどこまで強くなってんだ。凄いな」

「押忍。しかし、彼に負けたのなら悔いはありません」

 

第10回世界大会途中経過

 


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