第184話  世界最強の八人出揃う

 

「太郎先輩……自分の分まで頑張って下さい」

森は太郎に頭を下げた。
森は世界大会初出場ながらベスト16まで勝ち進んだ。

しかし第五回戦で激突したのは、限界組手で100人抜きを達成した、アメリカのマイケル・ストラウスだった。

前回世界王者のレオナルド・フェルナンデスはここ数年、試合には出場しておらず、今や世界一はこのマイケルか、レオナルドの弟のロベルトではないかとささやかれている。

「森、マイケル相手によくやったよ」

「しかし……マイケル選手の本気を引きだす前に負けてしまいました」

マイケルは追いつめられると、豹変し、とんでもない強さを発揮する。

「……よし!  俺がお前の分まで頑張るからさ、応援頼むよ!」

「押忍!」

 

 

山岸もレオナルドに敗れ、第10回世界大会の準々決勝に残った日本人は志賀と太郎の二人のみとなった。

あずさと美雪が準々決勝の選手紹介を待っていると、後ろでどすんと大きな音がたった。
相馬だった。

「キヨ……」

「お兄ちゃん」

「おう、何だよ辛気臭い顔して」

相馬はまだ空手着のままだった。

「残念だったね。でもカッコ良かったよ」

「うん。凄くカッコ良かった」

「ちっ!  そんな慰めの言葉はいらねーよ」

そう言って、ふんぞり返る相馬。

「太郎君、ついに準々決勝まで来たね。まさかあのひ弱そうな男の子がここまで強くなるなんてねー」

美雪は感心したように話す。

「ああ、あいつは頑張ったよ。現実から逃げ出した俺なんかとは違ってな。凄い奴だよ」

相馬のこの言葉に美雪とあずさはお互い目を見合った。

「ちょっと、キヨ、あんた志賀君に負けたショックで頭がどうかしちゃったんじゃない?」

「な……うるせー!  そんなんじゃねーよ!」

「うん、お兄ちゃんらしくない」

「お前まで……そんなに俺らしくないかな」

相馬は腕を組んで、うーんと唸ってしまった。
二人は声を上げて笑った。

 

 

壇上には、準々決勝に進出した八人の選手達が並べられた。

これから選手紹介が始まる。
放送席の正宗は選手のリストを眺める。

自分と縁のある男が二人もこの最強トーナメントを勝ち上がってきたのだ。
会場の照明が落とされ、壇上にスポットライトが当たる。

 

『それではこれより、第10回世界大会において、準々決勝まで勝ち上がった八人の選手の皆さんを紹介したいと思います』

 

会場はしいんと、静まり返った。

 

『身長178cm、体重89kg。第36、41、42回全日本大会優勝!  ゼッケン32番、志賀創二、日本! 』

 

志賀は一歩前に出て大きく十字を切る。
頬には大きな白いテープが張られている。
先の戦いで相馬に切られた傷だ。

 

『続きまして、身長164cm、体重69kg。体重別全日本軽量級を二度制覇!  軽量級でありながら無差別の大会で活躍する小さな超人!  さらには私に尊敬する大先輩!  ゼッケン56番、水河太郎、日本! 』

 

正宗の選手紹介に会場が湧いた。
太郎は恥ずかしそうに十字を切る。

しかし太郎の頬も大きく腫れあがっており、恥ずかしさからの赤らみは分からない。

 

『身長180cm、体重94kg。第40回全日本大会優勝。全ヨーロッパ大会を二連覇。世界王者レオナルド・フェルナンデスの実弟にして、限界組手100人抜きを達成。ゼッケン96番、ロベルト・フェルナンデス、アメリカ! 』

 

ロベルトはしっかりと前を見据え、ゆっくりと十字を切る。
もはや、あの陽気なロベルトはいない。

今や、世界屈指の最強戦士なのだ。

隣に立つ、ロベルトはいつもよりも、いままでよりも大きく見える。
太郎は、三年前にロベルトと別れて以来、一度も言葉を交わしたことはなかった。

今も話しかけたくてしょうがなかった。
しかし、自分に出来ることは一つしかない。

志賀に勝利すること。
そしてロベルトと拳で語る。

 

『身長200cm、体重102kg。第8回世界大会第七位、第9回世界大会第四位。ブラジルの誇るエベレストファイター。ゼッケン128番、ヴィクトール・ファオロ、ブラジル! 』

 

ヴィクトールは隣のロベルトに話しかける。

「Roberto.O senhor nao se tornou uma pessoa famosa muito desde que o senhor foi para U.S.A.?Mas eu estou igual a ultimo reuniao mundial.Eu nao me posso bater.(ロベルト。アメリカに渡ってから随分有名人になったじゃないかよ。だが、前回の世界大会と同じだ。俺には勝てんよ)」

ロベルトは、横目でヴィクトールをチラと見る。

「Como sobre isto?(それはどうかな?)」

 

『身長179cm、体重92kg。全米大会五連覇。第9回世界大会第六位。ロベルト選手と同時に行われた限界組手において、やはり100人抜きを達成。今大会優勝候補筆頭。ゼッケン129番、マイケル・ストラウス、アメリカ! 』

 

マイケルは歓声に手を振って応じる。
まるで武道家然とはしていないが、その底知れぬ強さは折り紙つきだ。

 

『身長181cm、体重90kg。各世界地方大会において多数優勝。全ヨーロッパ大会においては二年連続準優勝。ゼッケン192番、ヴィンセント・パンディーノ、イタリア! 』

 

第40回全日本準々決勝において、太郎と激戦を繰り広げたヴィンセントも今や世界のトップ選手だ。
太郎と戦った時よりも一回り身体が大きくなっているようだ。

 

『身長203cm、体重153kg。約20年前の第5回世界大会にて準決勝まで進出した、アメリカのドン・オスメント師範の息子にして、今大会最重量!  ゼッケン216番、ドン・オスメントJr、アメリカ! 』

 

太郎は、この男に会ったことがある。
以前、ロベルトを訪ねて板橋道場にやってきた、マイケルと一緒にいた男だ。

丸坊主に口ひげという風貌だが、ヴィンセント同様、暴君のような先輩に似ずおとなしい性格のようだった。
しかし、今こうして同じ土俵に立っている。

 

『お待たせいたしました。それでは最後の選手を紹介致します。身長187cm、体重107kg。弱冠16歳にして第6回世界大会第七位。第7回世界大会第三位。第8回、第9回世界大会優勝。限界組手において、史上初めて100人抜きを達成。そして今回、前人未到の世界大会三連覇を目指す、史上最強の空手家。ゼッケン256番、レオナルド・フェルナンデス、ブラジル! 』

 

レオナルドが紹介されると、会場は割れんばかりの拍手につつまれた。
ここ数年は全く試合に出ていなかったようだが、その知名度と期待度は他の追随を許さない。

256人いた世界代表選手達はついに八人にまで絞られた。

ついに最強最後の戦いが始まる。

 

32       志賀 創二  (28)  日本
56       水河 太郎  (28)  日本
96       ロベルト・フェルナンデス (28)  アメリカ
128   ヴィクトール・ファオロ (30)  ブラジル
129   マイケル・ストラウス (28)  アメリカ
192   ヴィンセント・パンディーノ (24)  イタリア
216   ドン・オスメント・Jr (25)  アメリカ
256   レオナルド・フェスナンデス (32)  ブラジル

 

第10回世界大会途中経過

 


NEXT → 第185話  太郎vs志賀 へ


BACK ← 第183話  太郎vsマルチェロ へ


 

サブコンテンツ

このページの先頭へ