第176話  耐久力

 

世界大会二日目。
依然、異常なまでの盛り上がりを見せる会場内。

有名な選手達は皆、危なげない試合内容で二回戦に進出していた。

大会二日目は第二回戦、第三回戦が行われる。
これを勝ち進めば、最終日のベスト32に残るという訳だ。

 

太郎は第二回戦の相手を昨日の試合で確認していた。
太郎の前の試合に勝利したスペインの選手だ。

間違いなく重量級、90kg以上はある。
強烈な下段蹴りで相手を倒してのけた。
太郎にとって越えるべき関門がやってきた。

 

『ゼッケン54番、カルロス・ロドリゲス、スペイン!  ゼッケン56番、水河太郎、日本!  Number 55 Carlos Rodriguez in  Spain! Number 56 Taro Mizukawa in Japan! 』

 

試合場に並ぶと、大人と子供以上の大会差がある。
世界大会ならではの組み合わせだ。

カルロスは、後ろで束ねている髪を肩からはじき、固い構えを見せる。

試合が始まるとカルロスはゆっくりと近づいてきた。
そして、太郎のふとももに重い下段を連続して打ちつける。

しかし、太郎は全く避けようとしない。

会場からは大きなざわめきが起こる。
やはり体格差は埋める術はなく、すぐに試合は終わってしまうという思いからだろう。

しかし、太郎の思いは違っていた。
強烈な攻撃を受けることによって、身体をほぐしていかなければならないのだ。

「(凄い衝撃だぜ!  だが、俺は森の木製バッドフルスイングにも耐えられるように鍛えたんだ。お前の蹴りなんか効かないぞ)」

太郎の予想どうりに、太郎の足は徐々に動くようになってきた。

「(来た、来たぞ!  足が熱い、動く! )」

 

中盤から太郎はカルロスの蹴りに合わせて軸足にカウンターを打ち始めた。

そして回り込んで突きを打つ。
カルロスは太郎の回転についていけない。

 

しかし前半の下段の連打の為、判定はカルロス有利の1-0であった。

しかし、表情に余裕がうかがえるのは太郎の方だった。
逆に、カルロスの表情には焦りの色が見えていた。

全力の下段を打ち続けたのに軽量級の太郎は倒れなかったのだから。

 

延長戦が始まると、太郎はカルロスの正面で打ち合った。
会場からは割れんばかりの拍手が湧きあがる。

軽量級選手が重量級選手相手に一歩も引かずに正面んから打ち合っているのだ。

カルロスは体格を活かし、太郎の肩口に突きを振り落とすが、太郎の骨は異常に固く、打っている拳の方が痛む。
段々と、太郎の手数がカルロスを上回り始める。

延長戦は4-0で太郎が勝利した。

 

「太郎せんぱーい!  やりましたねー!」

「ああ、何とかな」

「凄い動きでしたね!  もう完全に体調は戻ったんですか?」

「いや、まだ、何かぎこちないな。でも、そんなことも言ってられないな」

すると、太郎を見つめる男がいた。
次の試合、第三回戦の対戦相手。
スイスのアルベルト・ブルクハルト。

重量級選手には違いなさそうだが、髪も7・3に分けられており、メガネもかけているので、知的な雰囲気で、空手着を来ていなければ空手選手には見えない。

アルベルトは、8年前の第8回世界大会でゼッケン256番を背負っていた五十嵐を打ち倒した男だ。
そのままベスト8まで進出したが、レオナルドに敗れて以降試合からは遠ざかっていた。

「次の試合あたりで、大技も打ち慣れておかないとな。突きと蹴りをやたらめったら打つだけで勝てるのはこの辺までだろうからな」

 

第10回世界大会途中経過

 


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