開催初日、総本山の武道場は世界各国の人々でごった返していた。
入口を入ると、大きくトーナメント表が貼られていて、256人の選手達の名前が国名入りで並んでいる。
太郎は56番。
隠岐は来賓ということで、中央の別席に行っているようだ。
固定した道場に通っていない太郎と森は、日本代表でありながら、二人だけで行動しなければならない。
「ついに来たな」
「押忍」
「やっぱ世界大会の会場は雰囲気が違うな」
「押忍、緊張しますね」
トーナメント表を眺めていると、太郎は突然尻を蹴りあげられた。
「うわっ!」
「よう!」
そこには、相馬と板橋道場の面々が立っていた。
美雪に岩村も来ている。
あずさの姿は無いようだ。
「太郎!  ついに来たな!」
「押忍、相馬先輩」
「俺らがぶつかるのは準々決勝だ。なかなかの再開の舞台じゃないか。そこまで負けんなよ!」
「お、押忍!」
そう言うと、相馬は道場生達とサブアリーナに移動した。
岩村と美雪が太郎に近づいて来た。
「太郎君、ついに世界大会に出場だね。いやあ、感慨深いなあ」
岩村は言葉通り感極まった様子だ。
「正宗君は、今回もアナウンス役で来てるから」
「そうですか。頑張ります」
太郎と森は板橋道場の面々と別れ、サブアリーナに向かう。

と、正面には懐かしい顔があった。
「ロ、ロべ……」
「太郎」
ロベルトだった。
三年前に別れたときより、一段と身体が出来あがっていた。
来ているジャージが盛り上がり、その鋼の肉体が一目で分かる。
全日本を制した時よりも、限界組手で見た時よりも、さらに磨きがかかっている。
空手家としてのオーラ。
太郎は何故か言葉が出なかった。
三年という時間のせいだろうか。
「Roberto……」
後ろからマイケル率いるアメリカ選手団が入って来た。
太郎はロベルトから視線を外し、そのままサブアリーナに向かった。
「太郎先輩、良かったんですか? ロベルトさんですよ」
「うん……いいんだ。お互い同じことを思っているハズだ」
「同じこと?」
「離れていた三年間、お互いにいろんなことを経験したと思う。でも語るのは言葉じゃない。語るのは拳だ。それしかない」
午前10時。
第10回世界大会の開会式が始まった。
不動館長の挨拶。
二大会連続王者のレオナルド・フェルナンデスの選手宣誓。
そしてさっそく第一回戦が始まった。
三日間を掛けて四年に一度の世界一を競う戦いが始まる。

 

第10回世界大会トーナメント表

 


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