第168話  世界大会代表決す

 

壇上から降りた太郎は視界が揺れる。
辻との死闘で、体力を全て使い果たしたようだ。
森に肩を借りて、何とか立っていられる状態だ。

「た、太郎先輩!  相当ふらついてますよ、医務室行きましょう!」

「いや……大丈夫だ。それに、これから、相馬先輩の決勝だろ」

「お、押忍」

「約束したんだ。一緒に世界大会に行こうと」

 

『それでは中量級決勝戦を始めます!  ゼッケン65番、相馬清彦、東京!  ゼッケン128番、引地俊哉、東京! 』

 

帰って来た天才、相馬が壇上に上がる。
高校生大会で華々しくデビューしたのは既に15年前の話になってしまった。
相馬は、今年31歳になる。

対する引地は23歳の若獅子である。
色白で端正な顔つき。
空手着を来ていなければ、格闘家には見えない。
しかし、実力は相当なもので、第24回体重別では19歳、初出場にしていきなり準優勝をした。
次の年の第25回体重別では準々決勝で相馬と激突し、敗れている。3年振りの因縁対決となった。

引地は、イタリアのマルチェロに影響を受けた大技を駆使した組手を展開する。

 

試合開始直後、引地は大きく足を踏み出し、相馬に踵落としで襲いかかる。
当然、相馬には当たらない。
相馬は半歩後ろに下がりこれをかわす。

しかしこれには太郎は驚いた。

「そんな、あんな多いな動きの大技なのに……以前の相馬先輩なら豪快に足を刈っていたハズだ」

 

その後も、引地は後ろ回し、飛び蹴り、胴回し回転蹴りと大技を繰り出していく。
しかし、相馬にはかすりもしない。

引地はすぐに作戦を変更し、突きのラッシュを仕掛ける。
相馬は反撃せず、これを受ける。
引地は突きから一気に上段回し蹴りのフォームに変化した。

しかし、その刹那、相馬は前蹴りで引地の態勢を崩した。

「ガキがっ!  大技ってのは、たくさん打てばいいってもんじゃないんだぜ!」

相馬は、左足を大きく抱え込んだ。
引地はバランスを崩しながらも顔面をガードするが、相馬の抱え込んだ足は引地のガードを超え、真上から落下してきた。

「ブ、ブラジリアンハイキック!」

引地は、まともに蹴りを喰らい、そのまま倒れた。
相馬の一本勝ちが決まった。

会場からは相馬の完全復活を祝うかのような大きな歓声が起こった。

 

 

相馬が壇上から降りて来た。太郎はそれを出迎える。

「相馬先輩ー!」

「おう、なんだそのザマは。辻ごときを倒すのにそんなんじゃあ、世界の強豪と渡り合えんぜ!」

「お、押忍!」

相馬は太郎の頭を雑になでまわすと、板橋道場生達とサブアリーナに戻って行った。

 

太郎は、くやしかった。
また一緒に空手がしたい。
しかし、お互い違う道を歩み始めてしまった。
後は、空手の結果を出すことで、拳で語るしかないのだ。
森はそんな太郎の心情を読んだのか、太郎を心配そうに見ている。

「何だ、森、気持ち悪いな!」

「お、押忍!  失礼しましたー!」

 

 

軽重量級は、復活の42歳五十嵐を、総本山若手21歳の松崎が判定で下した。
敗退した五十嵐に、会場から大きな拍手が送られた。

そして、重量級は山岸と伴信一の巨漢同士の一戦。
延長戦の末、山岸が伴に競り勝ち、世界大会の切符を手に入れた。

最終的に体重別を制したのは、太郎、相馬、松崎、山岸となった。

そして、正宗のアナウンスのもと、世界大会出場が決定した12人が壇上に並んだ。

 

『みなさま、おまたせいたしました。これより、秋に行われます第10回世界大会の日本代表選手12名を発表いたします!』

 

代表選手が発表される。
太郎は檀上から会場を見渡す。

「(この会場のどこかに、あずさ先輩がいるんだろうな)」

 

『・・・・・・ 以上12名が日本を代表しまして、第10回世界大会に出場いたします!  第8回、第9回と世界大会の王座はいずれもブラジルのレオナルド・フェルナンデスに奪われたままとなっております!  是非、日本代表に王座を奪還していただきたいと思います! 』

太郎はアナウンスを聞いて灌漑にふける。
やはり世界大会代表は狭き門なのだ。
辻、津川、百瀬、青山、引地、五十嵐、伴兄弟その他多くの強豪が涙をのんだ。

世界大会まで半年。
後は、命がけで稽古をするのみだ。

 

第28回体重別大会が終わり、秋に開催される第10回全世界大会の日本代表の12人全てが決定した。

 志賀 創二 (28)         ……第42回全日本大会優勝
 森 大樹 (27)            ……第42回全日本大会準優勝
 高畑 健 (26)            ……第42回全日本大会第3位
 熊谷 真吾 (31)         ……第42回全日本大会第4位
 山城 隆仁 (25)         ……第42回全日本大会第5位
 宮路 哲也 (27)         ……第42回全日本大会第6位
 加納 雄一郎 (26)      ……第42回全日本大会第7位
 海老原 周男 (26)      ……第42回全日本大会第8位
 水河 太郎 (28)         ……第28回体重別全日本大会軽量級優勝
 相馬 清彦 (31)         ……第28回体重別全日本大会中量級優勝
 松崎 優斗 (21)         ……第28回体重別全日本大会軽重量級優勝
 山岸勝信 (31)          ……第28回体重別全日本大会重量級優勝

 

第28回体重別全日本大会結果

 


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