第165話  王者達との戦い

 

第28回体重別全日本大会二日目。
各階級を勝ち進んだ、32人の強豪達が壇上に並んだ。

太郎は軽量級の面々を見てびっくりした。
辻、津川、百瀬、青山、宮路、鮫島、山城、その全て戦ったことのある選手だったからだ。

中量級は、相馬、前回王者の引地。

軽重量級は、塩田、五十嵐、松崎。

重量級では、海外勢のフィリップ・アレラン、アントニオ・ロメロ、伴兄弟、山岸などが準々決勝に進出している。

 

 

二日目も不動館長の言葉で始まった。

「今回の、第28回体重別全日本大会は、私が館長に就任して初めての大きな大会です。にもかかわらず、全国から多くのお客様に来ていただいて、ありがとうございます。今、壇上に居並ぶ32人の猛者達は、半年後に行われる4年に一度の世界大会への切符を掛けて死闘を繰り広げることになります。どうぞ、会場の皆さま、彼らの戦いをお支えいただきますよう、お願いいたします。押忍!」

 

軽量級の準々決勝から始まった。
第一回戦は、軽量級の一時代を作って来た辻と津川の対戦だ。

最近の津川は良い結果が出せていなかったが、今大会辻や太郎の復活に奮起し、準々決勝まで駆け上がって来た。

津川は重い突きと下段で攻めたてるが、辻は現役時代同様のキレのある上段回し蹴りで津川を落した。

 

第二試合は、百瀬と青山の対戦。

今や、山城と共に軽量級の雄となっている青山。
それに比べ、最近は準々決勝にすら進めていなかった総本山の百瀬。
今大会も青山のキレのある動きが百瀬を翻弄するが、百瀬の放った渾身の中段突きが青山に突き刺さり、技ありを奪う。

そしてそのまま、百瀬は青山から技あり優勢勝ちを収め、5年振りの準決勝進出を果たす。

 

第三試合は、軽重量級王者に君臨した宮路は体重を82kgまで上げたが、今大会軽量級での出場の為、体重を10kg以上落しての参戦となった。
180cm近くある長身の宮路は、引きしまった鋼のような身体から、伸びのある突きや蹴りを駆使し、ベテランの鮫島を撃墜する。

 

 

そして軽量級準々決勝最後の試合は、第25回体重別軽量級王者の太郎対第26、27回体重別軽量級王者の山城の対戦だ。

実に3度目の対戦となる。
山城は太郎から2度も辛酸を舐めている。
既に世界大会への切符を手に入れている山城だったが、太郎復活を聞き、参戦した。
ここまでも、王者らしい圧倒的な強さで昇り詰めて来た。

 

『ゼッケン53番、水河太郎、東京!  ゼッケン64番、山城隆仁、山口! 』

 

前回の二人の対戦は、神覇館の歴史にも刻まれている凄まじい戦いだった。
山城が上段で技ありを取り、その後太郎が上段で一本を奪い返したのだった。

試合開始後、両者は見合っていたが、山城が太郎に近づいてきた。
そして突きから膝、下段という接近戦で攻めて来た。
太郎の上段を恐れて間合いを取らせないためだ。

さらにここまでは当時のような太郎の突きの連打を見ていない。
やはり、ブランクから完全には復活していないと読んだのだ。
山城の突きからのコンビネーションに太郎は攻撃を出さない。

本戦も半分が経過した。

「(やはり、あの時のような水河選手はいない!  このまま行かせてもらう! )」

と、太郎は突きを数発撃った。
突然の太郎の攻撃にとまどう山城だったが、たいして強い攻撃ではなかったので気にはしなかった。

しかし、刹那太郎は高速の突きの連打を山城に放つ。
連打が凄まじい速さで飛んでくる。

重さはさしてないが、そのかわり、攻撃が痛い。

「(ぐっ!  何だ? まるで槍で突かれているような激痛だ! )」

山城はガードしている手がみるみるうちに赤くなっていくのを感じた。
受ける間もない。

「(そんな!  突きだけで……突きだけで俺は敗れ去るのか? 長い間、試合から離れていたこの男に! )」

 

本戦は終了した。
5-0で太郎の圧勝だった。

 

山城は、試合後の握手をすることもままならなかった。

「押忍……水河さん、完敗です。一体さっきの突きは?」

「いや……お恥ずかしい話、道場のような恵まれたところで稽古が出来なかったもので……サンドバッグ代わりに木を叩いていたんです。拳にとってあまり良くはないのかもしれませんが……」

山城は太郎の拳を見て、驚いた。
拳頭が鋭利な突起物のようになっている。

「あの高速の突きは? 以前の突きも凄い連打でしたが、今回のはさらに早かった」

「シャドーくらいしか出来なかったもので。その代わり、これでもかと追い込んで、突きの正確性と素早さを求めて頑張りました」

「……そうですか」

山城は深々と礼をして、壇上を降りた。

「稽古は環境じゃない。どれほど自分を追い込めるかだ。俺は、努力で水河選手に負けたのだ」

 

試合を終えた太郎を、森が出迎えた。

「太郎先輩!  凄い連打でしたね」

「ああ、思ったより使えたな」

「山城選手相手に突きだけで勝利するとは」

「だが、本番はこっからだよ。準決勝の宮路。それに……」

軽量級最強の男、辻を倒さなければ、世界大会への道は開かれない。

 

第28回体重別全日本大会途中経過

 


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