第164話  相馬軍団復活

 

第28回体重別全日本大会当日。
会場に入ると板橋道場の道場生達が集まっていた。
懐かしい面々が太郎に近寄ってくる。

「太郎君、本当に復活したんだね」

美雪に会うのも数年振りだ。
綺麗な長い黒髪は健在。
以前より一層女性の魅力が増したような気がした。

「美雪先輩、お久しぶりです」

「キヨの馬鹿のせいでみんなバラバラになっちゃって」

美雪は申し訳なさそうにしている。

「いや、とんでもないですよ!  相馬先輩のせいなんかじゃないです。僕の方こそすいません。道場を出て行って、そのまま音沙汰なくて……」

「太郎君も別の場所で頑張ってたんだよね」

岩村が声を掛けてくれた。

「押忍、岩村先輩」

「相馬先輩は、すでにサブアリーナに行ってるよ」

「・・・・・・そうですか」

あずさの姿が見えない。
しかし、自分からは聞くことは出来なかった。

 

 

太郎は森とともにサブアリーナに向かった。

サブアリーナの入り口には相馬が立っていた。

「よお」

「そ、相馬先輩!  や、やはり、相馬先輩は空手着姿が一番お似合いです!」

「あ? 馬鹿、俺様は何でも似合うんだよ!」

「相馬先輩、お久しぶりです」

森は相馬に挨拶をする。

「おっ!  誰かと思ったら、野口師範んとこにいた森じゃねーか。随分明るくなったな」

森は相馬に会う度に暗いと言われ続けていた。

「森……太郎を頼むぜ」

相馬はそう言って、去って行った。
相馬とロベルトと騒ぎながら大会を駆け巡ったあの頃には戻れない。

「森!  セコンド頼むぜよ!」

「押忍」

 

 

開会式が始まった。
出場選手256人が4つの壇上に並ぶ。

選手宣誓は、昨年度軽重量級を制した宮路が行った。
そんな宮路が今回出場するのは、軽量級だ。

館長挨拶は、不動。
式が終わり、選手達が退場していく。

 

と、太郎に声を掛ける男がいた。
軽量級無敗の王者。
神奈川支部の辻だった。

「水河、やはり来たか」

「辻さん……」

「引退後も稽古は続けてきたんだが……やはり大会に出ないとつまらんな。そこで復活の機会をうかがってたところ、今大会に君と相馬が出ると聞いてね」

「お、押忍」

「俺に、4年前の借りを返したいだろ」

辻に決勝で敗れ、太郎は世界大会への切符を逃していた。

「俺はもう35歳だが……前より強いよ」

「押忍!  望むところです!」

「会うなら決勝だな」

辻は太郎復活に最高の舞台を用意してくれた。

 

 

式の後、さっそく試合が始まった。

中量級の壇上では、相馬からスタートだ。
名前が呼ばれると会場に大きな歓声が沸き起こった。

相馬は、開始後わずか10秒で、中段回し蹴りによる一本勝ちを収めた。
天才相馬の復活に会場は酔いしれた。

そして、軽量級ゼッケン1番の辻は、開始1分で上段回し蹴りによる一本勝ちを収めた。

久しぶりに見るその蹴りは、衰えをてなかった。

「やっぱりレジェンド達は凄いですね」

「ああ、最高だ」

 

津川、百瀬、青山、宮路……なつかしき太郎のライバル達も危なげなく一回戦を突破していった。
そして、ついに太郎の出番となった。

 

『ゼッケン53番、水河太郎、東京!  ゼッケン54番、井川吉弘、埼玉! 』

 

会場からは大きな声援が起こる。

 

井川は過去軽量級で入賞したこともある強豪だ。
復活戦としては申し分のない相手だ。

太郎は井川の攻撃を全てカウンターで合わせる。
相手の動きを良く見る。
試合感覚を呼び起こす為にじわじわとベースを上げていく。

復活を本戦5-0で飾った。

 

「太郎先輩! やりましたね」

「ああ、でもまだ身体が固いな」

 

 

その後、太郎は二回戦、ベテランの宮里に本戦5-0の優勢勝ちを収めた。
段々と動きが全盛期に戻って来たような気がした。

 

 

そして第三回戦の相手は、太郎の公式戦初勝利の相手、山根だった。

もう5年以上も前の東京都大会の一回戦で戦い、上段回し蹴りで一本勝ちを収めていた。
その山根も去年の体重別では第4位に入る強豪になっていた。

「太郎先輩、ここからですよ」

「ああ、わかってるって!」

 

『ゼッケン49番、山根純太、東京!  ゼッケン53番、水河太郎、東京! 』

 

山根は太郎に対して、突撃してきた。
連打では無く、一発一発渾身の突き蹴りを放ってくる。

太郎は、その攻撃を受けない。
そのまま喰らい続ける。

そして、山根の下段蹴りに合わせて上段蹴りを放った。
カウンターで入った蹴りで山根は倒れた。

 

 

「太郎先輩、やりましたね。これで準々決勝進出ですよ」

そして次の試合、山城が勝利し、明日の準々決勝の相手は、軽量級王者の山城との一戦に決まった。

 

試合を終えた山城は太郎に近づく。

「久しぶりですね、水河さん」

「明日はよろしく」

山城は余裕の笑顔で去って行った。
太郎にはわかっていた。
世界大会出場を決めた山城が体重別に出場する訳を。

「太郎先輩、山城選手は昨年の全日本で軽量級でありながらベスト8に進んでいる強豪です。油断しないで下さいね」

「大丈夫。彼を失望させないような戦いをするよ」
 

太郎、相馬の復活の大会、そして世界大会出場を掛けた戦いが始まる。

 

第28回体重別全日本大会途中経過

 


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