第124話  相馬vs太郎

 

『それでは、準決勝第二試合を始めます。ゼッケン72番、水河太郎、東京!  ゼッケン128番、相馬清彦、東京! 』

太郎は、ゆっくりと壇上に上がる。

自分を空手の世界に導きいれた男。
自分の青春を賭した男。

そして最強の暴君にして天才。
相馬清彦が待っていた。

 

3年半前、深夜の森で奇跡の出会いをした。
この男に出会ったことで運命が左右された。

暗く、自分に自信が無く、どうでもいい毎日を過ごしていた。
そんな、自分を変えてくれた。

尊敬してやまない、感謝してやまない。
次々と思いが巡る。

 

「やっと、俺のところまで来やがったか。せいぜい楽しませてくれよな」

「お、あ」

太郎の気持ちが爆発しそうになる。
試合前だというのに、言葉が漏れそうになる。

「太郎!」

「お、押忍」

「男が語るのは拳だよ。余計なこと考えてんじゃねーよ」

「押忍!」

 

 

『お互いにー、構えてー……始めいっ! ! 』

「おらー!」

試合が始まると、太郎は大きな気合とともに相馬に向かって行った。
全てを出す。

一発目から下突きの百裂拳を放つ。
しかし、相馬に全て見切られ、受けながされる。

打ちおろしから下段に繋げるが、避けられカウンターで転ばされた。

「どうしたよ」

「まだまだです!」

太郎は勢い良く立ちあがり、相馬に挑む。
太郎は、上段から踵落とし、後ろ回しと大技を連打。

しかし、相馬にはかすりもしない。
さりとて、相馬からの反撃も無い。

「ふふ、全く当たらんなあ」

相馬は、太郎との実力差を示す為か、太郎の攻撃を全て受け流す。
しかし反撃もしない。
このままでは太郎の立つ瀬が無い。

「(どうなってるんだ。ここまで差があるか? くそっ! )」

相馬は太郎の目の前まで近づいてきた。

「ほら、どうしたよ。俺は手を出してないぜ」

「うおー!」

太郎は突きの連打、蹴りまでのコンビネーションを見せるが、やはり当たらない。
会場は盛り上がって来た。

「こんなもんか、ふふ」

 

太郎は一歩下がって構える。

「(……このまま俺の攻撃を避け続け、試合終了間際に攻撃に転じるつもりだな。やはり、まだ実力に差はあった。それも相当な実力差が。しかし、このまま終わることもしない。相馬先輩、見てください、俺の秘儀をっ! )」

 

太郎は、相馬に近づく、そして構えた姿勢から全身の力を抜く、そして、館長の神から伝授されたあの技を打つ。

「ひゅっ!」

太郎の左手が消える。

「無打かっ!」

神から授かった秘儀『無打』。

打った刹那、拳は相手に当たっている。
最高速のジャブだ。

しかし、その突きも相馬には当たらなかった。
相馬は瞬時に突きを見切り受け流す。

しかし、太郎の狙いは相馬に突きを当てる事ではなかった。
受けられた瞬間、拳を引き、相馬のアバラに一本拳をめり込ませる。

相馬の顔が歪んだ。

そのまま、太郎の左三日月蹴りが同じ場所に炸裂した。
太郎には相馬のアバラを折った感触があった。

「ぐっ」

相馬が声を上げる。
そして倒れ込む。

「やったか!」

「糞がっ!」

相馬はそのまま倒れ込むかと思いきや、身体を回転させ、胴回し回転蹴りに機動を変え、太郎の顔面に襲いかかる。

「な、なにい……」

その蹴りは太郎のこめかみにクリーンヒットし、太郎はそのままマットに沈んだ。

 

意識はある。が、身体が動かない。

「(一発。たった一発でやられてしまった。しかも倒れ込むその流れであの大技を当ててくるなんて……天才だ、やっぱり)」

そんな感傷に浸っている太郎は、脇を抱えられ起こされた。

「てめー、いつまで寝てやがんだっ!」

「そ、相馬せんひゃい……」

「重いんだよ!  自分で立てや!」

会場から、大きな拍手が起こる。
先輩の威厳を見せ、相馬の一本勝ちとなった。

 

太郎は相馬に抱きついた。

「先輩、最強でした!」

「ちっ!  気持ち悪りーなー!」

相馬は太郎にげんこつをくらわす。
会場から笑い声が起こる。

「いちちち」

「お前、わかってんだろーなー。これから3位決定戦で志賀の野郎をちゃんと倒せよな。それで相馬軍団の表彰台独占だ!」

「あ……」

そうだった。
太郎は相馬に負けたことにより、長年の因縁、志賀との対決が決まったのだった。

「相馬軍団の時代が来たんだぜ!」

「お、押忍!  死ぬ気で頑張ります!」

会場からは、相馬軍団の時代到来への拍手が続いた。

 

第40回全日本大会途中経過

 


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