第123話  最強の遺伝子

 

準決勝を前に、壇上の前では緊張の面持ちで試合を待つ志賀。
先輩の辻が声を掛ける。

「とんでもないことになったな。まるで相馬達の為に今大会があるようじゃないか。なんとかしてくれよな、志賀」

「押忍……頑張ります」

辻にも志賀の緊張が伝わってくるようだ。

そうなのだ。
先ほどから会場に不穏な空気が流れ始めた。

それは、レオナルド以来の外国人決勝進出があるのではと。
ロベルトには、その実力は十分にあった。

 

その不穏な雰囲気は、態度には出さずとも相馬軍団にも広がっていた。
そのため、普段おどけているロベルトは口数少なく試合を待っている。

それは、試合に勝てるのか?
と、いうような緊張ではない。

もし、勝ったならばどうなってしまうのか、というものだった。

 

 

『ゼッケン1番、志賀創二、神奈川!  ゼッケン64番、ロベルト・フェルナンデス、東京! 』

 

二人の強豪が見合う。
第23回体重別全日本以来、2年半振り2度目の対戦である。

ここまで二人とも圧倒的な力の差を見せ無傷で勝ち上がっている。

 

試合が始まった。
志賀もロベルトも見合ったまま、動かない。

主審に促され、先に動いたのはロベルトだった。
内股への下段で距離を計り、突きを打つ。

志賀は突きを上手く捌き、下段、中段の蹴りを繰り出す。
ロベルトはかまわず突きと膝を連打する。

志賀のディフェンスは全日本屈指、ロベルトの攻撃の全てを受け、そして技を返す。
この鉄壁なガードに会場は沸き上がる。

 

が、辻はこの展開を良くは思っていない。

「このままじゃ、以前の対戦と同じだ。勝つ組手じゃない。あの時は、まだ創二とロベルトに力の差があった。だが、今は……」

 

ロベルトの突きや膝の連打は段々と熱を帯びて来た。
徐々に志賀が下がり始めた。

受けれてはいるが、返し技はロベルトには効いていないようだった。

志賀は大きく、息を吐き、そしてラッシュを仕掛ける。
ロベルトは少し下がり始める。

が、志賀の突きのタイミングを計ったように、ロベルトの膝が志賀のアゴを捉えた。
志賀は顔からマットに沈む。

 

会場からどよめきが起こる。

しかし、志賀はすぐに立ち上がった。
ロベルトの技ありが決まった。

 

「あー、ロベっ!  やりやがったー!  技ありだー!」

「上手い具合に入ったのにな。志賀の野郎、執念だな」

 

志賀の表情は鬼気迫るものとなった。
やみくもにロベルトに殴りかかる。

そこには王者の風格は無かった。
しかし、ロベルトは受けてばかりで攻撃に転じない。

 

「どうしたんだ、さっきの技で膝を痛めたか!」

「違うっ!  あの野郎、志賀の絶望感に飲まれてやがるんだ!」

「えっ!」

 

志賀は、がむしゃらにロベルトに打ってかかる。
しかし、バランスが取れていない。

先ほどの膝蹴りのダメージが大きいようだ。
しかし、ロベルトは下がる一方だ。

 

「ロベッ!  ふざけてるんじゃねー!」

相馬の怒号が飛ぶ。

「志賀は全力でお前に全身全霊で挑んでいるんだ!  お前はそれに答えろ!  手を抜くなんて、相手を一番辱めている行為だぞー!」

 

相馬の声に、ロベルトは意を決し、向かってくる志賀に対し、重い下段の嵐を浴びせる。
志賀はスネ受けをすることも出来ずロベルトの破壊力抜群の技をモモに受け続ける。

が、一向に下がる気配は無く、むしろロベルトに向かってくる勢いが増して来た。

既に突きすら出ない。
気合だけでロベルトに向かって行く。

ロベルトは渾身の下段を打ち続ける、そして試合終了間際、志賀はマットに沈んだ。 

 

立ちあがるまでにしばらく時間がかかったが、自分で立ち上がった。
無念の表情でロベルトの手を握る。

ロベルトの一本勝ち。

ついに、兄レオナルド以来の外国人による全日本決勝進出を決めた。

 

 

「よくやったぞ、ロベ。あれでいいんだ。それが空手家の礼儀だ」

相馬は暗い表情のロベルトに声を掛ける。
そして隣に立っている太郎の尻を蹴りあげた。

「てめー!  次は俺らの試合だろうが!  早く、向こうのコーナーに行きやがれ!」

「押ー忍、そうでしたー!」

このやりとりに、ロベルトも笑顔を見せた。

「二人とも、頑張ってネ!」

相馬は、ロベルトに蹴りを入れる。

「次はお前を料理してやるからな。首を洗っとけよ!」

「お、押忍!」

ついに、太郎と相馬の試合が始まる。

 

第40回全日本大会途中経過

 


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