第89話  ロベルトとマイケル

 

準々決勝が始まる前に、壇上には8人の選手達が並んだ。

無差別の大会にあって、相馬やマルチェロのような軽い選手が入っている。
そして結局、日本人で準々決勝に勝ち進んだのは、4年前の第8回世界大会同様、相馬のみであった。
太郎には壇上の相馬がとても輝いて見えた。

選手たちが紹介を受け壇上を降り始めても、残っている男がいる。
相馬とマイケルだ。二人は近距離でにらみ合っている。

「I did not think that I remained a quarterfinal. Though it doesn’t get to know whether it is a genius somehow the snubbing saucily.(準々決勝まで残るとはな。天才だか何だか知らないが、その生意気な鼻っ柱をへし折ってやるぜ! )」

「ここは日本だぜ、日本語しゃべれや!  とにかく、ぶっ殺す!」

 

言語が違っても喧嘩できるんだな、と太郎は思った。

「ロべよ、相馬先輩ここに来てまだやってるよ」

「いつもどおりってことだネ」

 

準々決勝第一試合は、ロシア選手同士の対決。
ベテランのアレキサンドルに若手のイワンが挑むが、実力差は歴然としていた。
パワーで圧倒されたイワンは本戦で敗退した。

 

勢いづいていたマルチェロであったが、巨人ヴィクトールとのリーチの差を埋めることが出来ない。
大技を繰り出すが、ヴィクトールには通じなかった。

 

試合前、相馬は腕を組んでいるが落ち着かない感じだった。
少し震えてるようにも見える。
太郎は、初めて見た。
これが武者震いなのだろう。

 

『ゼッケン160番、マイケル・ストラウス、アメリカ! Number160 Michael Strauss in America!  ゼッケン161番、相馬清彦、日本!  Number161 Soma Kiyohiko in Japan! 』

 

「ついに始まるな。ロベルトにとっては知り合い同士の対決だな」

「うん、そうだネ」

 

 

―――――――――――――――約5年前
マイケルと出会ったのは、ロベルトがアメリカ留学してすぐのことだった。
マサチューセッツ州ケンブリッジは、近郊にいくつもの大学がひしめき合う学園都市である。
その郊外にドン・オスメント師範のアメリカ支部ケンブリッジ道場はあった。

ロベルトは空手にはあまり興味は無かったが、兄が稽古しているのと同じ道場がアメリカにもあるのかと思い、通る度に道場を覗いていた。
そんなある日、ロベルトに話しかけて来たのが、マイケルだった。
当時はまだ茶帯を締めていた。

The wonder brother of you …… Leonardo? Just like it.(お前……レオナルドの弟なんだろ? そっくりだな)」

And know my brother?(兄を知っているの?)」

Nobody guy that does not know the guy in Leonardo are doing Shinhakan karate.(神覇館空手やってる奴でレオナルドを知らない奴なんていないぜ)」

ロベルトは、マイケルから何度も空手を始めるように誘われたが断った。

だがマイケルの試合は応援に行くようになった。
マイケルは無差別の神覇館空手の大会において、そんなに体格に恵まれている方では無かったが、その類稀なる格闘技のセンスでどんどん大きな大会に出場するようになった。

しかしロベルトはマイケルの本当の凄さは空手センス以外のところにあると気付いていた。
それは追い込まれた後に見せる異常な変貌であった。
マイケルは試合中ダメージを受け、力尽きそうになると、決まって嗚咽を上げた。
そしてその後、人間が変わったかのような戦闘力を持って勝利するのだった。

20歳の時に全米大会で優勝している。
その決勝でも、優勝候補で世界大会上位進出の常連だったブラジルのベテラン、カルロ・バルボッサに追い込まれた後、同じように逆転したのだった。

Though Ne know what, it’d be a high as my head is burning at the last minute.(何かわからねーけど、土壇場で頭が燃えるようにハイになるんだよ)」

恐らくマイケルは危機に直面すると、大量の脳内麻薬を分泌するように出来ているらしいと、ロベルトは推測した。―――――――――――――――

 

 

「相馬先輩、大丈夫だよな?」

「……マイケルはね、試合で一度も負けたことが無いんだヨ」

「へ?」

天才・相馬清彦と、無敗の男・マイケル・ストラウスの試合が始まる。

 

第9回世界大会途中経過

 


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