第85話  世界の強豪達

 

ゼッケン32番、下村も順調に一回戦を勝ち進んだ。
いつもは敵視している大阪勢だが、世界大会ともなると応援したくなるから不思議だ。

下村は疲労した表情で壇上を降りてきた。
いつもは余裕で緒戦を終えるのだが。
世界はやはり凄いと太郎は思った。

 

ゼッケン33番は、ブラジルの古豪カルロ・バルボッサだ。
ロシアのミハイルと同じく第6回世界大会から3大会連続でベスト8に入っている。
カルロも圧倒的な強さだが、際立ったのが変則的な動きをする上段回し蹴りだ。

「相馬先輩。カルロ選手の上段は軌道が変わってますね」

「あれはな……ブラジリアンハイキックだ」

「ブラジリアンハイキック?」

「おう。通常は相手の顔面を真横から蹴り込むが、ブラジリアンハイキックは一度相手の頭の上まで蹴り足を持ち上げて、真上から襲いかかる」

「ほー」

「カルロみてーなデカブツの蹴りが真上から降ってくるんだから雑魚はたまられーだろうな」

相馬の言うとおり、相手はブラジリアンハイキックの餌食になり、倒れ込んだ。

「うわあ……凄い! 相馬先輩! 僕にもあの技使えますかね?」

カルロに華麗なKO劇を見せられ、太郎は今からでも練習したくなった。

「ああ? も言っただろうが! てめーみてーな中途半端な野郎が、あんな技を使うなってな! 基本をマスター出来てねー奴が応用技を打っても、そんなもんは砂場の楼閣よ!」

「オー、相馬先輩! それを言うなら砂上の楼閣ネ!」

「てめー、ロべ! 外人の貴様が俺様に日本語の間違いを指摘すんのかー!」

「オーノー!」

試合を終えたカルロは相馬に踏みつけられているロベルトを発見した。

「Roberto! o Roberto! u busco mesmo uma ausencia longa!(ロベルト! ロベルトじゃないか! 随分久しぶりだな! )」

「Carlo busca uma ausencia longa.Alem disso, eu fiquei mais forte.(カルロさん、お久しぶりです。また、さらに強くなりましたね)」

相馬は早くも機嫌が悪くなっている。

「ちっ! またかよ! ったく、ロべの野郎はどんだけ顔が広いんだよ!」

「まあまあ、相馬先輩。母国の知り合いに久しぶりに会った訳ですから」

「Eu fui pegado de surpresa para ouvir que o senhor participou de reuniao mundial.Eu realmente fiz carate pela causa de Soma.O senhor… que sempre nao se interessou so pelo apoio da partida de Leonardo em carate vindo.(お前が世界大会に出場すると聞いてビックリしたぞ。本当に相馬の元で空手をやっていたんだな。いつもレオナルドの試合の応援に来るだけで、空手には興味が無かったお前がなあ)」

ロベルトはカルロや試合を応援していたヴィクトールやジョゼなどのブラジル選手達と楽しそうに会話している。
しかし兄のレオナルドの姿は無かった。

「Onde o irmao mais velho esta?(兄さんは?)」

「O senhor esqueceu… o Roberto?Leonardo e a mente inteira geral em um lugar habitual.(なんだロベルト、忘れたのか?レオナルドはいつものところで精神統一中だよ)」

「Oh, era assim.(ああ、そうだったね)」

 

ロベルトは手を振って、相馬らのところに戻ってきた。

「てめー! 俺様を差し置いて、インターナショナルな会話してんじゃねーぞ!」

「オー、すんません」

「しかしロべは凄いな。何ヶ国語しゃべれるんだ? さすがハーバードだな」

太郎は感心している。

「なんだ? サンダーバード?」

本当に知らなそうな相馬だった。

 

試合が進んでいき、太郎は因縁の相手を見つけた。
イタリアのマルチェロだ。
試合前に後輩のヴィンセントと軽いスパーリングをしている。

「太郎、あれ……」

「ああ。マルチェロだ。やっぱり世界大会に出てるんだな」

太郎がマルチェロと出会ったのは2年半前の第22回体重別全日本の会場だった。
あずさをしつこくナンパしているのを止めに入り、強烈な上段回し蹴りを喰らった。

「なんだ太郎! あのおマル野郎と何かあったのか?」

「お、押忍。何でも無いです!」

妹をナンパしたなどと言おうものなら、相馬は、この場でマルチェロに襲いかかるだろう。
太郎は笑ってごまかした。

「(マルチェロのスパーリングパートナーをしている人もあの時会ったな。確かヴィンセントとか言ってたな。マルチェロと違って紳士的な奴だった。トーナメント表には載ってなかったから出場はしないんだな)」

ヴィンセントはあの日、マルチェロの横暴を太郎に謝罪していた若者だ。

「(まあ今考えると、マルチェロが俺とあずさ先輩とのキューピットみたいな感じだなあ。感謝しないといけないのかも……)」

試合が始まると、マルチェロは以前と変わらず大技を連発する。
華麗な後ろ回し蹴りで一本勝ちを収めた。

 

「みんな強いなあ! ああ、僕も出場したかったー!」

太郎は強豪達の試合を見て、声を上げる。

「ふっ、太郎。随分と生意気になったな。強い奴らを見て、試合に出たいなどとのたまいやがって。まあ、4年後に頑張って出るんだな。そんときは俺様が世界王者としてお前と戦ってやるぜ」

「お、押ー忍! お願いします」

「4年後は3人で出場しようネ!」

「ああ、そうだな! ロベ!」

太郎は既に、4年後の世界大会を見据えていた。

頭の片隅に将来への不安を残しつつ・・・・・・

 

第9回世界大会途中経過

 


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