第83話  アメリカからの訪問者

 

11月初旬。
世界大会まであと、数日。

太郎とロベルトは稽古後、道場でくつろいでいた。
二人が見ているのは最新号の特報神覇館だ。
『第9回世界大会特集』とある。
表紙は全世界王者でロベルトの兄のレオナルド。

「おい、ロベルト。お前のお兄ちゃんが一番目立ってるな。こうゆーの、弟としてどうゆー気持ちなの?」

太郎がちゃかす。

「うーん……あまり何とも思わないな。僕はあまり空手に興味が無かったからサ」

「なんだ、つまんない」

ページをめくっていくと、注目選手が大きく取り上げられている。

「前大会準優勝、ロシアの皇帝アレキサンドル・マレンコフかあ、185cm、100kg? 化け物だなあ」

「あっ、リチャードさんだ。前回第3位。アメリカの道場で指導されてたんだヨ」

「ロべ、お前空手やってなかったのにアメリカの道場に詳しいな」

「うん。前にも言ったけど、大学の近くにあったんだ。そこに仲のいい友達が通ってたから良く顔を出してたんだヨ」

「そう言えば、そうだった……あ、この前に体重別の時に会った人も載ってるじゃん」

太郎は夏の体重別の時、ロベルトに話しかけた男を指さした。

「ああ。ヴィクトールだね。第7位だったんだ」

「しかし……ロシアのミハエル、ブラジルのカルロ……ベスト8に入ってる選手は全員180cm以上だなあ。さすが世界大会だな。その中で、我らが相馬先輩は凄いな!」

前世界大会第5位。
172cm、80kg。
相馬清彦。
第8回世界大会、日本人で唯一ベスト8に入っている。

「凄いなあ! 相馬先輩!」

「イエース! 凄いヨ! 相馬先輩!」

 

二人が騒いでいると、2階のジムから相馬が降りてきた。

「うるせーなー!」

「押忍」「押ー忍!」

「おい、てめーら! だべってんなら俺様にお茶でも買ってこんかい」

「押ー忍。かしこまりましたー」

 

太郎は道場のドアを開けた。
すると、前が見えない。

「へ?」

太郎が良く見ると、巨人が立っている。
丸坊主に口ひげ。スーツ姿の2m近い大男だ。

「ギャー!」

太郎は腰を抜かした。

「どうした、糞太郎! うおっ! 何だ、このデカブツは!」

相馬も驚いている。

「ド、ドン?」

「Roberuto!」

大男はロベルトに抱きついた。

「ロベー! このデカブツは何だよ!」

相馬は突然現れた大男に蹴りを入れる。

「ノー!」

大男は突然蹴られ怯えている。
いかつい見た目とは裏腹におとなしそうだ。

「相馬先輩。この男はアメリカ支部ドン師範の息子でドン・オスメントJrダヨ」

「ドン・オスメントデス。It came to Roberto for the greeting. (ロベルトに挨拶しに来ました)」

「Oh! Thank you purposely! How are the Don teacher and Richard?(わざわざありがとう! ドン先生やリチャードさんは元気?)」

「Both are energetic. Samurai’s senior Richard shape as usual. (二人とも元気だよ。リチャード先輩は相変わらず武士の格好をしているよ)」

「Haha. It is Japanese the favor. (ハハハ! 日本好きは相変わらずのようだね)」

英会話にしびれを切らした相馬がロベルトを蹴る。

「おいおい、てめーら! 宇宙語でしゃべってんじゃねーよ!」

「そ、相馬先輩……宇宙語って……」

太郎は笑いを堪えた。

 

「Roberto.I am too.(ロベルト、俺もいるぜ)」

ドンの後ろにはもう一人、男が立っていた。

「Michael of reeling! (マ、マイケル! )」

鮮やかな金髪と青い目をした白人の青年だ。
身長はロベルトより少し小さいくらいで178cmほどだろうか。

「Did you remember the thing of me ? It is fairly after a long time. Was it energetic ?(随分と久しぶりだが、俺の事忘れてないだろうな。元気だったか?)」

「Of course, Michael seemed to was energetic and good, too.(もちろん! マイケルも元気そうで良かったよ)」

「Do not seem to participate in the world rally by you be not interested in the Karate at all. Do not only have be to be fatty soaked somewhere of you of the tournament. (お前も世界大会に出場するらしいな。空手に全く興味を示さなかったお前がなあ。トーナメントのどこかでぶつかればいいな)」

二人はかなり親密な仲なようだ。

太郎はロベルトからマイケルの名前を聞いたことがあったのを思い出した。

 

「おい! 糞外人ども! いつまで宇宙語しゃべってんだ! ロべ! なんなんだよ、こいつらは!」

感動の対面だったが、相馬には関係が無いらしい。
マイケルの顔を指差す。 

「押ー忍! 世界大会出場の為にアメリカから来たんデスよ。わざわざ僕のところに顔を出してくれたみたい」

「ちっ、俺んちは出会い喫茶じゃねえぞ!」

「で、出会い喫茶?」

使い方は合っているのだろうか。

 

「Is this fellow Soma?It shall not be a fellow who seems to be great according to the rumor. This fellow where did Roberto hold the yearning?(こいつが相馬か。噂通り偉そうな奴だな。ロベルトはこいつのどこに憧れを抱いたんだ?)」

マイケルは後ろで黙って立っているドン・オスメントJrに話しかける。
ドンは苦笑いを浮かべている。

「It is not wonderful though was interested because it seems to be one of the favorites of the world rally. Seem to being sure location of enemy in be immovable Japan that not is.(世界大会の優勝候補の一人らしいから興味があったが、たいしたことなさそうだな。不動無き日本には敵はいなそうだな)」

マイケルはロベルトに別れを告げて、去って行った。

 

 

「ちっ、やっと帰りやがったか! しかしあの金髪野郎、どこかで見たことある気がするぜ」

「押忍、マイケルはアメリカ大会やヨーロッパ大会で優勝している強豪ダヨ。世界大会は初出場だけど、特報神覇館には注目選手で載ってるよ……ほら」

ロベルトはマイケルのページを相馬に見せる。

「なになに……華麗なるアメリカの天才、マイケル・ストラウス……だとお! 俺様以外を天才と呼ぶんじゃねー!」

相馬はマイケルのページを破り、丸めてゴミ箱に捨てた。

「オーマイガ!」

「ところで、ロべ! さっき、あの糞野郎は何て言ってやがったんだ! ソウマがどうとか言ってやがったが……まさか俺様の悪口じゃあるまいなー!」

ロベルトの顔が引きつった。

「オース、そ、相馬先輩の話なんて出てないデス」

相馬は、すかさずロベルトの胸倉を掴みあげた。

「てめー、ロベ! 俺たちは何年一緒にいると思ってんだ! てめーが嘘ついてんのくれー分かるんだよ!」

「わ、わかりました。は、話すヨ!」

 

相馬はロベルトを放り投げた。

「そ、相馬先輩が……たいしたことなさそうだって……言ったんダヨ」

「なあにー!」

相馬は叫び、道場を飛び出していった。

「わあ! 相馬先輩が!」

「オーノー!」

 

 

相馬はマイケルの姿を見つけるや、とてつもない距離から飛び蹴りを放った。
刹那、マイケルは横にひょいと避け、相馬を掴んで投げ飛ばした。

駆け寄った太郎とロベルトは相馬が地に背を付けているのを初めて見た。

「ぶっ殺す!」

相馬はマイケルに殴りかかるが、ドンに止められた。

「ノーノー、ソーリー、ソウマセンパイ」

ドンは片言の日本語で相馬をなだめるが、マイケルは笑いを浮かべている。

「Haha. Be wonderful after all.(ハッ、やっぱりたいしたことないな)」

太郎とロベルトは怒り心頭の相馬を取り押さえた。

「Don. Please take Michael early. (ドン! 早くマイケルを連れて行ってくれ! )」

「Thank you Roberto.(ありがとう、ロベルト)」

ドンはマイケルを連れ帰った。

「ふ、ふ……マイケルか……殺してやるぜ」

太郎には、相馬の毛がいつもより逆立っているように見えた。

 

第9回世界大会トーナメント表

 


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